遠方に住む親の高齢化や健康不安をきっかけに、同居や近居のために親を呼び寄せる「呼び寄せ高齢者」が増えています。しかし、良かれと思って進めた呼び寄せが、結果として親に多大なストレスを与えてしまうリスクには注意が必要です。高齢になってから住み慣れた地域や友人関係を離れ、新しい土地で生活を再開することは、想像以上に心身の負担となります。孤立感や環境の変化から認知症が進行したり、うつ状態に陥ったりするケースもあるため、呼び寄せを決定する前に、本人が本当にそれを望んでいるのか、何度も対話を重ねて意思を尊重することが最も重要です。
また、医療や介護サービスといった地域資源の継続性についても事前に綿密な確認をしておく必要があります。親が現在受けている要介護認定や介護サービスは、引っ越し先の自治体へスムーズに引き継ぐことができますが、ケアマネジャーやヘルパーなどの担当者はすべて交代になります。新しい担当者やケアプランに親が馴染むまでに時間がかかることを想定し、引っ越し先のケアマネジャーや地域包括支援センターに事前に相談しておくことが欠かせません。さらに、持病がある場合は、紹介状の手配や通いやすい信頼できる医療機関の選定を事前に済ませておくことも安心に繋がります。
最後に、同居や近居をスタートした後の家族間の適切な距離感と役割分担についても、現実的に話し合っておくべきです。特に同居の場合、生活リズムの違いからお互いにストレスが溜まりやすく、介護負担が呼び寄せた子ども世帯に集中して共倒れになってしまうケースが少なくありません。完全に依存する関係ではなく、親が自分でできる家事や役割を奪わないこと、そして介護保険サービスやデイサービスなどを最初から頼る前提で生活を設計することが大切です。家族全員が無理なく、それぞれのプライベートな時間や生活ペースを維持できる環境を整えることこそが、呼び寄せを成功させる鍵となります。